家督相続と同盟形成に見る現代経営の教訓
こんにちは、カヤ・エンタープライズです。歴史の中で生き残るために巧妙な戦略を練り、実行してきた毛利元就。その戦略の数々は、現代の企業経営にも応用できるヒントを多く含んでいると考えています。ここでは、鏡山城の戦いの後の家督相続争いから吉田郡山城の戦いの前に至るまでの毛利元就の行動を現代的視点で読み解き、現代の経営戦略に明日から生かせる内容を解説したいと思います。
毛利元就は、鏡山城の戦いから吉田郡山城の戦いまでの間に、家督相続や勢力拡大、同盟形成といった数々の挑戦を乗り越え、毛利家を繁栄へと導きました。この間の行動には、現代の経営者が学ぶべき重要な戦略的洞察が多く含まれているのではないでしょうか。では、どのようにこれらの行動を現代の会社・組織経営に応用できるのでしょうか。
毛利元就から学ぶ経営戦略シリーズと題し、解説したいと思います。第一回は以下からご確認ください。
さて、1523年の鏡山城の戦いを経た後の概略について解説します。詳細は以下でも解説しますが、大きな流れは以下の通りです。
毛利元就は鏡山城の戦いの後、家督を相続する中で反対勢力を排除し、自らの地位を確立しました。その後、尼子氏から離反し、大内氏と同盟を結びます。この動きにより、毛利家は一方で政治的安定を確保しつつ、他方では領土を拡大し、勢力を着実に拡大しました。これらの行動を現代に置き換えると、組織内部の改革、競争環境の見極め、そして戦略的パートナーシップの形成という重要な経営課題に対する示唆を与えると考えます。
なお他記事で解説する部分と重複する場合は、さらにその経営課題をより抽象化し、別に置き換えています。そして、鏡山城の戦い(1523年)の後から、吉田郡山城の戦い(1540年)に至るまでの毛利元就の行動のエッセンス部分を抽出し、解説します。
経営戦略に応用できる3つの教訓―リーダーシップ
1. 組織内の改革とリーダーシップの確立
鏡山城の戦い後、毛利元就は家督相続に伴う反対派を粛清し、リーダーとしての地位を確立しました。新たなリーダーが組織内の対立や不安を解消し、全員が同じ目標に向かう環境を整えることが現代企業でも求められます。例えば、内部の派閥問題や抵抗勢力が存在することを前提としたうえで、組織全体の統率力を高める上で何が重要か、完全に論破することが大切なのではなく、一緒に戦う仲間として、どうやったら仲間に引き込むことができるのか、考えてみるのが大切と言えるでしょう。
応用例
ある企業の新任社長が、組織内の対立を解消するために、透明性のある意思決定プロセスを導入しました。社員間の真の信頼関係を築いた結果、業績向上につながった事例があります。元就のように反対派を排除・粛清するだけではなく、新しいビジョンを提示し、全体の目標を共有する姿勢を示すことも重要です。
先日、カンブリア宮殿で魚太郎という会社が特集されていました。ADKからパークハイアット東京に勤めていられた方が、先代の父親の跡をついで社長に就任。しかし就任した当初は「女性が社長なんて」という従業員からの反発もあり、改革がうまく進まなかったそうです。地元の、地域の人は魅力のある価値を、価値として認識していない、その意識醸成からはじめ、売り方の工夫(柵で販売)でその年は過去最大の売上を記録し、その儲かった分を従業員に還元。実力を示したことで社内でも少しずつ受け入れられるようになった、というストーリーが語られていました。今でも店舗にたてば、書かれているPOPの修正など、お客様にわかりやすいようにしている姿が映像で印象的でした。
まさに、この考え方です。「着実な成果をもって外部の信頼を得る」ことの重要性を活かした例といえるでしょう。私はまだ魚太郎に行ったことがないので、いつか行ってみたいですね。私は知多半島と聞くと、どうしても知多を思い浮かべる人間ですが、これからは知多半島といえば、魚太郎と話せるようになったのが一番の収穫でした。
2. 環境変化への適応と柔軟性
1525年、元就は尼子氏から離反し、大内氏との同盟を選択しました。この選択は、競争環境を冷静に分析し、より有利な立場を選んだ結果です。現代の企業でも、企業は市場環境や競合の動向を常に注視し、必要に応じて方向転換する柔軟性が求められます。
応用例
大手電機メーカーが、成長が鈍化していた家電市場から離れ、高収益を見込める医療機器市場へと進出した成功例が挙げられます。このように、環境変化をいち早く察知し、自社のリソースを最適化することが重要です。「既存の勢力に固執せず、より有利な選択肢を求めて舵を切る」戦略の成功例といえます。
よく語られるのが、富士フイルムと、Kodakでしょうか。富士フイルムは、知っての通り写真フィルムで一世を風靡(セピアではないですよ)しましたが、デジタルカメラの登場により販売数が減少すると、その技術を活かして医薬品や化粧品分野に参入し、成功を収めています。その一方で、Kodakは変わらずフィルム製造に力を入れていた結果、新規事業に参入する前に倒産してしまった、という話です。これはKodakに限らず、ILFORDなども同様で一度倒産しています。
自分でこの市況から抜け出すために、挑戦するということはとても大切なことです。しかし、祖業を辞めることや市況が悪くなったとはいえ、その事業から抜け出すというにはもったいないと感じることも大いにその気持ちがわかります。どこでそこに踏み切るのか?自分なりに基準を定めるというのも必要でしょう。
なお私は今でも、銀塩写真をやるのですが現像までの日数が非常にかかります。C-41なら数時間で現像できますが、それ以外は最低でも2週間はかかるため、もっぱらモノクロはILFORDのXP2 SUPERを使用することが多いです。自家現像すれば良いのですがね。結局、デジタルカメラでRAWからモノクロに直したほうが楽、となってしまうのが最近の私のクセなので、2025年はもう少しフィルムカメラを使って撮影したいと思います。レンズ買わなきゃなあ。
3. 戦略的パートナーシップの形成
大内氏との同盟により、元就は政治的安定と軍事支援を得ました。現代の企業も、信頼できるパートナーとの協力を通じて、リソースを補完し合い、競争力を高めることができるでしょう。
応用例
中小企業が大手企業と提携し、研究開発費の負担を分担することで、革新的な製品を市場に投入した事例があります。パートナーシップは、単なる協力関係ではなく、双方が持つ強みを最大化する手段として活用されます。
研究開発費にお金がかけられなければ、当然革新的な製品を生み出したり、新たな商品の研究をしたりと、収益になるまで時間がかかるものを、どうしてもしづらくなってしまいます。潤沢な資金を持つ企業とのM&Aも一つの手段です。
実践ステップ|毛利元就の教訓を活かすために
それではこれら本日のポイントを踏まえ、あなたの経営にどのように活かすかを考えてみましょう。そのために、今から紙とペンを用意してください。そしてこれらアクションプランをぜひ今から紙とペンを必ず使用し、考えてみましょう。
ただ読み進めるのでは、あなたの組織は変わることはできません。いつも書く通りで面倒だと思うかもしれませんが、面倒なことは、すべからく大切なことなのです。
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周囲の人材の力を見極め、適材適所を実現する
組織内での人材の力関係や適性を正確に把握し、それに応じた役割を割り振りましょう。特に、潜在的なリーダーシップを持つ社員を早期に発掘し、育成する仕組みを整えることが重要です。どうやって、力関係や適性を把握しますか?そもそもその情報はバイアスがかかっていませんか?そして、潜在的なリーダーシップを保有する社員を発掘・育成するとは、具体的にどうやりますか。
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権限移譲を通じて信頼関係を構築する
組織のメンバーに一定の裁量を与えることで、彼らが自らの役割に責任を持つように促しましょう。毛利元就が嫡男の隆元を人質に出しつつも信頼関係を築いたように、適切な権限委譲は組織全体の結束力を強化します。裁量を与えていると思っていても、従業員はそう思っていないかもしれません。どう適切に従業員にリスクを取らせて、収益性を改善しますか。
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柔軟な立場変更で機会を掴む
変化する市場環境に迅速に対応するため、状況に応じて立場や戦略を変更する柔軟性を持ちましょう。毛利元就が尼子氏から大内氏に鞍替えしたように、最善の選択を見極めて方向転換する能力が重要です。前回、マトリクスの話をしましたがその活用方法を改めて検討してみませんか。
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定期的なリスク評価を行う
競争環境の変化を見逃さないために、現状のリスクと新たなチャンスを定期的に評価しましょう。例えば、四半期ごとに市場調査や内部監査を実施し、柔軟な意思決定を可能にします。内部監査が悪者になるようではダメです。また内部監査対策なんて言うものはもってのほか。しかしどの企業も内部監査対策をして内部監査に挑むというのが常態化しています。潜在的にリスクを抱えて通常営業している、と言っても過言ではないのが現状でしょう。どうやって、理想の状態をキープしますか。
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組織の価値観を明確化し、一貫性を保つ
組織全体が共通の目標を共有し、一貫した行動をとるためには、経営者自身が明確な価値観とビジョンを示す必要があります。そのビジョンに基づいた意思決定を積み重ねることで、従業員の信頼と忠誠心を引き出しましょう。どうやって従業員に伝えますか、そしてその情報はきちんと伝わっていますか。
まとめ
かなりの文量となってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。約10年分を1記事にまとめるというのは大変難儀であって、この記事を書くにも10日以上かけてしまいましたが、それなりのものが書けたと考えています。ぜひ、この記事を参考に、改めて経営戦略を見直してみてください。
もちろん、ご要望がありましたら相談も承ります。ぜひお問い合わせからご連絡ください。
なお本記事は筆者の集めた情報から作成しているものの、毛利元就の生きた時代のことを考慮すると、また最新の研究結果によって否定されることもあり、正確性を保証するものではありません。できるだけ最新の情報に当たるようにして記述しておりますが、間違いと思われることがありましたら、ぜひご連絡ください。
念のため記載しておきます。