全ての事業を維持するリスク
「この事業はいつか利益を生むはず」「新しい取り組みに投資する余裕がない」
こんなた理由で、様々な事業を抱え込んでいませんか?事業リスクを減らすために、多角化を進めた企業の多くがこのような事情に陥るのです。
全ての事業に等しく人員や資金といった経営資源を割くことで、分散し、結果的に競争力を低下させるケースが少なくありません。
経営環境が変化する中、成功する企業は、利益を生まない事業を潔く見直し、成長分野に集中する「事業ポートフォリオ最適化」を行っています。では、どのように事業の選択と集中を行えば良いのでしょうか?
ポートフォリオ最適化のフレームワーク
事業ポートフォリオを最適化するには、次のような手段を取ることが良いでしょう。
なおいつも通りですが、実際に自分が手を動かすことが重要です。経営者が、トップダウンで自ら行うことが組織変革には最も必要なのです。経営企画や営業戦略と言った部署に丸投げするのではなく、自分の頭の中と、それら専門部署との連携を緊密に行うことも大切なことですよ!
1.現状分析
すべての事業を「市場成長率」と「市場シェア」の軸で整理する「ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)マトリクス」を使用して、四象限に分類しましょう。
(a) 花形(Stars)
市場成長率が高く、自社のシェアも高い事業。これは将来的な収益源になるため、積極的投資が必要です。
(b) 金のなる木(Cash Cows)
市場成長率は低いものの、高いシェアを持つ事業。利益を生み続ける源泉としてできる限り維持します。
(c) 問題児(Question Marks)
市場成長率は高いがシェアが低い事業。投資価値を慎重に見極める必要があります。
(d) 負け犬(Dogs)
市場成長率もシェアも低い事業。撤退の検討が必要です。
2.資源配分の見直し
マトリクスで得た分析結果に基づき、資源を重点的に配分する事業と縮小・撤退を検討する事業を決定します。
この際、感情的な判断を排除し、データに基づく意思決定が重要です。
コンコルド効果という言葉を聞いたことがありませんか。これは簡単に言えば、せっかくここまでやったから、という心理が働くことで、合理的判断ができなくなり、損失が出ると分かっていてもなかなか投資を辞めることができない状態のことを示します。
これまで投資してきた費用や時間、労力が無駄になるのを惜しみ、損失になると分かっていながらも、投資を継続してしまう。認知バイアスの一種であり、非合理的な意思決定を引き起こしてしまうのです。
こう言われたとしても、意外と合理的に事業から撤退するというのを決めることは難しいのです。
だからこそ、冷静に撤退基準を決め、それに基づき行動するということが必要になると言えます。別に今すぐ撤退をする必要はないのです。ただし、自ら決めた撤退基準は必ず守らねばならないということです。
3.撤退の計画と実行
撤退する事業が決まったら、従業員や取引先への影響を最小限に抑えるための計画を立てます。ただし、この事業を撤退するという言葉には色々ありますが、売却や事業統合も選択肢の一つです。今はM&Aも比較的簡単に行えるようになっています。ビジネスマッチングや、事業承継に力を入れている地銀や信金もおおいので、相談してみることもオススメです。
成功事例1:ある中小製造業の変革の場合
ある中小製造業A社では、20年以上にわたり先代社長から引き継いだ複数の事業を展開していました。しかし、低収益の事業を維持するため、資金や人員のリソースを割かねばならず、結果として成長分野への投資が進まなかったことから、収益率の低下に苦しんでいました。
特に先代の趣味から始めた酒販事業が会社全体の方針ともマッチせず、かといって人員の配置転換をしても専門性を活かせず、悩みのタネだったそうです。
そこでA社はBCGマトリックスを活用。「金のなる木」に該当する事業から得たキャッシュを、成長可能性の高い「花形」に再投資する方針を採用し、同時に「負け犬」事業からは1年以内に収益性が一定程度の基準まで改善が見込まれなければ撤退することとしました。
結果的に経営資源を集中させた結果、3年後には収益性が20%向上。新規事業投資へも積極的に転換できるようになり、より成長に向けた行動をされています。
成功事例2:あるサービス業(映像制作)の場合
あるサービス業B社は、10年以上にわたり映像制作業に従事し、これらを起点として小売業などにも進出。シナジーはあるものの、手間ひまがかなりかかるため、映像制作分野のみ好調なうちにカーブアウト(M&A)して売却を検討されました。このときのバリュエーションでは十分な金額がついたものの、直後に大きな取引が決まり、売却はストップ。現在も売却せず、小売業も以前の通り好調なことから、バリュエーションは現在10倍以上になりました。
このように、売却を検討した頃にはマトリクス上では「問題児」扱いでしたが、実は潜在的に花形事業になる可能性があったということでした。
本日の実践ステップ=> ポートフォリオ最適化を始める
それでは本日の実践ステップを最後にご紹介します。いつも通りですが、必ず試しましょう。考えるとは紙とペンを用意して、実際に紙に起こすことです。読み流すのではなく、実際に手を動かしてください。
すべての事業を評価する
自社の事業を客観的な視点で整理し、それぞれの市場成長率やシェアを測定します。BCGマトリクスを使用してわかりやすく分類しましょう。
投資と撤退の意思決定を行う
データに基づいて、どの事業に注力し、どの事業を縮小または撤退するかを決定します。今すぐ撤退縮小である必要はありません。ただし、撤退基準を定めたらその通りに実行することです。
計画を立て、チームを巻き込む
従業員や取引先との円滑なコミュニケーションを心がけ、計画の実行を進めます。事業縮小や、撤退は取引先に迷惑をかけると思いがちですが、倒産するより遥かに良いことです。懇切丁寧に行動すれば、きっとわかってもらえます。
まとめ
現代の経営環境において、事業ポートフォリオの見直しは避けて通れない課題です。限られた資源をどのように配分し、競争力を最大化するかを再考することで、経営の安定と成長が実現できます。本記事が、その第一歩を踏み出すヒントとなれば幸いです。また、お困りの際は我々への相談もオススメです。ぜひご検討ください。